#02

「夢がある農業」を若い世代に託したい。
攻めの経営は、その想いがあるからこそ

農業者小舘 誠一さん
SKファーム株式会社 代表取締役
小舘 誠一さんKodate Seiichi

1985年設立の小舘大根生産組合を前身とした、SKファーム代表。父の経営する漬物用大根の加工場で経験を積んだあと、農業に参入。

以来、地域の耕作放棄地を再生しながら規模を拡大し、現在、農地の広さは400ha超。だいこんや大豆、そば、にんにくなどを栽培しながら、6次産業化も積極的に推進している。

大根栽培が出発点。さまざまな作物を生産する、大規模農業法人へ

400haを超える農地をもつSKファームは、つがる市界隈では五本の指に入る大規模農業法人です。創業したのは1985年。漬物用白首大根の生産、販売を始めました。しかしやがて、たくあんの需要の減少や中国からの輸入増加の影響で、事業の採算がとれなくなっていきます。その結果、地域の白首大根の生産者は激減しました。

そこで私たちは、刺身のツマや大根おろしなどに使う加工用青首大根の栽培へと方向転換しました。ただつがる市の畑は砂丘地で、夏場は高温になるため、あまりよいだいこんは採れません。そこで2007年からは、より冷涼な秋田県鹿角市の耕作放棄地を再生しながら、規模を拡大してきました。現在はだいこん以外にも大豆・そば・にんじん・にんにくなど、多様な作物を栽培しています。

時代の流れを受け、6次産業化も積極的に進めています。生産から熟成まで、独自の製法でこだわり抜いてつくる「黒にんにく」は、SKファームの人気商品。「黒にんにくに続け」と新たな事業の柱を模索していたところ、数年前、とても魅力的な作物に出会うことができました。

寒冷地向けの「もち性大麦」を、新たな事業の柱にしたい

その作物とは、もち性大麦「はねうまもち」。冬の寒さが厳しい東北地方では、それまで大麦の栽培は行われていませんでした。ところが、農研機構中央農業研究センターが寒冷地向けのもち麦品種を開発し、私たちが試験栽培したところ、生育がよく、驚くほどの収量に恵まれたのです。つがるの土地や風土に合う品種で、農薬不使用で栽培できます。

時を同じくして、食物繊維やβ-グルカンが豊富なもち麦の健康効果が、メディアで取り上げられるようになりました。そこで「はねうまもち」を6次産業化し、県民の健康促進に貢献できないものかと考え始めました。日ごろから何でも相談できる関係だった青森銀行さんから、6次化交付金を活用する提案を受けたのは、ちょうどそのころ。煩雑な申請手続きをサポートしてもらい、精麦施設が完成し、生産から加工まで一貫で行える体制が整いました。その結果、「はねうまもち」を原料にした「つがるもち麦」の商品化を実現できたのです。

現在は地元の協力会社とともに、麦飯用もち麦のほか、もち麦粉を使った乾麺や麦玄米パン、もち麦シリアルといったオリジナル商品をつくって販売しています。「麦特有の臭みがまったくない」「独特のもちもちした食感がクセになる」というお客さまの声を聞くたびに、事業化に挑戦したかいがあったと実感します。

あおぎん応援団より
青森銀行 木造支店
増田 修也

交付金の申請手続きを、全面サポート。
関係者間の「情報の交通整理役」を担いました

精麦工場の建設にあたっては、農林水産省の6次産業化交付金の申請手続きを全面的に支援。利子補給を受けられる農業近代化資金制度を活用した融資をさせていただきました。窓口が異なる二つの制度を活用するため、青森銀行が県の担当者との間に入り、スケジュール管理や関係者の合意形成も担いました。加えて、私どものお取引先に商品を紹介したり、試食してもらったり、感想や意見をうかがったりするなど、販路拡大や商品開発のお手伝いもさせていただいています。

「GAP認証」を足がかりに、持続可能な農業を次の世代へ

SKファームは「土づくりこそ農業の要」ととらえ、農薬を極力使わない、安心安全な農作物づくりにこだわってきました。これは消費者の健康のみならず、土に直接触れる従業員の健康のためでもあります。私はまた、「農業でもっと稼げるようにして、若い人が夢をもてる職業にしたい」と思ってきました。そのため、従業員の所得向上と福利厚生の充実にも取り組んできました。

そんな当社ではいま、「GAP(農業生産工程管理)」の認証取得に向けた準備を進めています。GAPは食品安全だけでなく、環境保全や労働安全、人権保護、農場経営管理など、持続可能な農業生産の取り組みを認証する仕組み。今後、新しい取引先と関係を築くとき、信頼していただくための根拠になればと取得を決めました。

実はこの認証を取得するために、私たちが新たに取り組むべきことはほとんどありません。私たちが長年実践してきたことを、書類の形へと落とし込めば事足りるからです。とはいえ審査のための書類づくりは大変で、青森銀行のJGAP指導員からのアドバイスに助けられています。

「来年はもっといい野菜をつくりたい」――。つくる喜びを追いかけて、30年以上走ってきました。これからは、若い人たちがSKファームを担う時代です。産声を上げたばかりの「つがるもち麦」事業を彼ら自身の手で発展させるとともに、だいこんやにんじんなど他の作物の6次産業化にもチャレンジしてほしい。そうしたなかから、つがるを代表するブランドが育ってくれれば、これ以上の喜びはありません。

あおぎん応援団より
青森銀行
ビジネスパートナー部
石郷 喜廣・泉山 航太

GAPを熟知する行内の指導員が、
生産管理を含めた事業全体をバックアップ

青森銀行では、資金面のご融資のみならず、お客さまが事業を進めるうえで生じるあらゆるニーズに総合的に応える支援体制を整えています。GAP認証取得のための支援も、その一環。GAPは今後、自社の経営姿勢を社内外に示し、取引先を広げ、ビジネスを拡大していくうえでますます重要になっていきます。そこで当行では、行内で有資格者のJGAP指導員を養成し、独自にガイドブックを作成。お客さまの負担が少ない形で認証取得できるよう、きめ細かなサポートを行っています。